建設業は日本経済を支える上で重要な産業です。建設業が無くては現在の発展はありえないでしょう。しかし近年、資金繰りの悪化が原因で倒産や解散をする建設業者が増えています。特に注目すべきが「黒字倒産」です。売掛取引で仕事を受注するものの、手元の運転資金不足が原因で債務超過となり倒産してしまいます。
ファクタリングは売掛債権を第三者に売却して資金を調達する方法です。合法的な金融工学であり、中小企業庁も推奨しています。売掛取引や手形取引などが主流の建築業にとって、支払い期日前に資金調達できるのは大きなメリットです。
ファクタリングと今までの金策を比較しつつ、どれだけ建設業の資金繰りに効果的なのかを解説していきます。
ファクタリングが建設業界の資金調達に適している5つの理由
ファクタリングが建設業界の資金調達に適しているのには理由があります。
- 審査対象は売掛債権と取引先であるため
- 将来的な負債にならない
- 建設業界の売掛債権額は高額になりやすく支払い期日が長いため
- 取引先が期日前に倒産しても返済不要
- 債権法の改正で利用のハードルが下がった
審査対象は売掛債権と取引先であること
銀行融資や売掛債権担保融資、手形割引などで資金調達を行う際には必ず「審査」を受けなくてはなりません。資金難による赤字経営や税金の滞納などがある場合、審査通過するのはかなり難しいでしょう。
その点、ファクタリングでは売掛債権が確実にあるか、取引先の財務状況に問題はないか(確実に期日に支払いをしてもらるか)が審査されます。申込企業の財務状況に関しては、あまり重要視されないのです。
将来的な負債にならない
融資と名前のつく金策は全て「借金」です。支払いサイクルが不安定な建設業界の場合、なるべく赤字にならないようにやりくりをしています。毎月の返済がきついがために、更に融資を重ねてしまう「自転車操業」をせざるをえない企業も少なくありません。
ファクタリングは債権を「売却」して資金調達する方法であるため、借金にならないのです。借金をせずに資金繰りを改善できるのはファクタリング最大のメリットといえます。
建設業界の売掛債権額は高額になりやすく支払い期日が長いため
建設業は取引額が他の業界に比べて高額になりやすい業種です。また、売上金の入金期日も3ヶ月後~4ヶ月後とかなり長いのも特徴です。ファクタリングは高額な債権でも、手数料さえ支払えば期日前に資金調達ができます。
手数料は取引方法やファクタリング会社によって異なりますが、5%~30%が相場です。自社と取引先、ファクタリング会社の3社で行う「3社間ファクタリング」の手数料相場は5%~15%です。仮に1000万円の売掛債権で5%の手数料だとしても、50万円の手数料で900万円以上(掛け目90%と仮定)の資金が手に入りことになります。
取引先が期日前に倒産しても返済不要
手形割引では、取引先が倒産して手形が不渡りになった場合、調達した資金の返済を請求される「償還請求権」があります。財務状況が芳しくない取引先の場合は、連鎖倒産のリスクを背負うことになるのです。
ファクタリングは手形割引のような「償還請求権」がほとんどありません。リスクごとファクタリング会社に譲渡できるのは建設業界にとっては大きなメリットといえます。
債権法の改正で利用のハードルが下がった
2020年4月からファクタリングに関係する「債権法」が改正されます。債権法とは民法466条の「債権の譲渡性」の部分を指します。改正された部分は、条文2の「債権禁止特約」は無効であると明記された点です。
建設業はほとんどが元請と下請の関係です。元請には中堅クラスから大企業クラスの会社が多く、売掛取引の際には「債権譲渡禁止特約」が付与されています。債権禁止特約は、債権が反社会的勢力に渡ることを防ぐための防止策ですが、売掛債権を資金化できないという中小企業にとってはデメリットでもあるのです。
禁止特約そのものが無効であることが明記されたため、売掛債権を活用した金策が取りやすくなりました。建設業の中小企業にとっては、まさに渡りに船。資金繰りの改善でファクタリングを活用しやすい環境が生まれたのです。
建設業のアキレス腱は「資金繰り」にある
建設業界は景気の浮き沈みが激しい業界です。仕事が全く無くなったと思えば、急に抱えきれないほどの仕事が舞い込んでくることも多いです。近年はオリンピック効果もあって、景気はやや上昇気味。しかし、オリンピック後の需要に関しては見通しが立っていないのです。
先細りになっていくのか、それとも建設ラッシュが始まるのかは、業界全体のお金の流れで変わると予想されています。まさにアキレス腱は「資金繰り」にあるのです。
手形決済が下請の資金繰りを悪化させている
建設業で主流の「手形決済」は、多くの元請企業が当たり前のように行っています。下請企業にとって、手形決済は支払い期日が長いため、資金繰りが悪化しやすい取引方法でもあります。
下請企業の泣き所は「資金繰り」です。設備投資などをしたくても、入金までの期間が長いために思うように資金計画や投資計画が立てられないのです。結果的に設備投資などは「融資」に頼らざるを得ません。
融資は毎月の返済が発生します。万が一取引先が破産でもしようものなら、債務超過となってしまい連鎖倒産の可能性も高くなってしまうのです。
元請依存症が資金繰り悪化の根源
建設業の資金繰りが悪化しているそもそもの原因は「元請依存度」が高いためです。高度経済成長期の頃は、一人親方が基本でした。近年は合理化や分業化が推進され、元請が多くの建築業者に仕事を割り振る仕組みができあがっています。
結果的に、中小企業の建築会社の経営者は元請を上司にした「管理職」のような扱いになってしまうのです。資金繰りは全て元請企業からの支払いに依存することになります。契約を切られたり、取引規模を縮小されてしまうと会社運営そのものが傾いてしまうのです。
建設業の資金調達方法を比較する
今までの建設業は、資金調達方法がある程度決まっていました。政府が推奨するようなモノであっても、場合によっては利用できないといったデメリットがあったのです。
銀行融資のメリットとデメリット
最も多いのが銀行などの金融機関からの融資です。ビジネスローンなどが挙げられます。メリットは「まとまった資金を調達できる」や「利率が低い」などがあります。逆にデメリットは「資金調達に時間がかかる」や「申込企業の財務状況次第では審査に通らない場合もある」などです。
銀行融資は数千万円から数億円規模の大きな資金調達に向いています。利率も低く設定されているため、利用者にとっては使い勝手の良い金策でした。しかし、融資申込から調達までには短くても1ヶ月程度がかかりますし、審査次第では融資してもらえないというケースもあるのです。
ゼロ金利など、国が支援している資金調達方法ではありますが、融資するのは国ではなく銀行です。金利は下がったものの、不渡りを出してしまうと銀行の沽券にも関わります。赤字企業は申込すらできないのです。
手形割引のメリットとデメリット
建設業では手形取引がまだまだ主流です。手形を使った「手形割引」も資金調達方法として使われています。手形割引のメリットには「支払い期日前の手形を資金化できる」ことが挙げられます。デメリットは「取引先が破産などで手形が不渡りになった場合に連鎖倒産の可能性がある」などが挙げられます。
手形割引は融資と違って借金にならない金策でです。しかし、万が一手形が不渡りになった場合、調達した資金を全て返却しなければならないという「リスク」を持っているのです。資金繰りが悪化している企業にとっては、取引先の資金繰り次第で連鎖的に倒産してしまう可能性があります。
売掛債権担保融資のメリットとデメリット
売掛債権担保融資とは、手形とは違う「売掛払い」にしている債権を担保にして融資を受ける資金調達方法です。ABLともいわれています。メリットは「売掛債権を担保にして融資が受けられる」や「金利が安い」などが挙げられます。デメリットは「将来的な負債になる」という点です。
売掛債権を担保にするため、担保資産が無い場合でも融資が受けられますが、結局は「借金」です。毎月の返済がありますし、返済計画によっては自ら首を締めてしまう可能性もあります。
建設業界に太陽の光=ファクタリング
建設業界の資金繰り改善に最大の効果をもたらす「ファクタリング」は、債権法の改正によって更に業者数が増えていくことでしょう。自社にあった会社を選ぶためにも、ファクタリングの基本的な知識をつけてから比較検討してください。