売掛債権を第三者であるファクタリング会社に売却することで資金を調達する「ファクタリング」では、審査が行なわれます。銀行の融資審査とは全く異なる内容の審査なため、初めてファクタリングを利用する方は、どんな審査が行なわれるのか不安に思う方も少なくありません。
今回は、ファクタリング審査を受ける前に知っておきたいこと、そして実際の審査で重要視されるポイントについて解説していきます。
ファクタリング審査の基本のキ
ファクタリング審査を説明する前に、審査の基本的な内容について解説していきます。基本を知っておけば、後から説明する審査で重要視されるポイントもすんなりと理解できるようになるでしょう。
審査対象は売掛先
一般のファクタリング業者は、審査をする対象が売掛先をメインにしている場合がほとんどです。売掛債権を資金化するというのは、冒頭でも述べた通り、債権自体をリサイクルショップに買い取ってもらうことと同じように売却することです。
リサイクルショップで家電製品などを売却する場合、買い取ってもらう利用者の審査はされませんよね?それよりも持ち込んだ家電製品の価値を査定されると思います。それと同じように、ファクタリング業者は、買い取った後の債権がきちんと資金化できるのか(期日通りに全額入金されるか)、つまりは持ち込まれた売掛債権に価値があるのかということをチェックするのです。
銀行系ファクタリング会社は売掛元の財務状況も審査される
銀行系ファクタリング会社とは、メガバンク(三菱UFJ銀行、みずほ銀行、三井住友銀行など)が親会社のファクタリング専門会社のことです。銀行融資では、利用者(融資を受けたい人)がきちんと返済できるかを審査されます。銀行系ファクタリング会社では、売掛先の審査がメインですと銘打っていても、実際には利用者の財務状況もチェックされるのです。
しかも、銀行系ファクタリング会社では2社間ファクタリングは取り扱っていません。3社間ファクタリングのみの取り扱いがほとんどです。売掛先と売掛元、そしてファクタリング会社の3社間で行なわれるファクタリングです。2社間に比べ、申込みから資金化までの時間が長くかかりがちです。
参照 3社間ファクタリング
民間のファクタリング会社であれば、審査が売掛先だけの場合が多いため、早いところだと即日で資金化することが可能です。しかし、売掛先と売掛元、債権の信頼性なども審査されるため、時間が多くかかってしまうのです。
ファクタリング審査で重要視されるポイント
ファクタリング審査で最も重視されるのは、
- 売掛先と債権の信頼度
- 売掛元の信頼度
の2点です。
ただし、両方とも審査されるポイントが異なります。どのような内容が審査されるのでしょうか?
売掛先と債権の信頼度
売掛先と債権の信頼度というのは、ファクタリング会社にとって、貸し倒れのリスクが低い売掛債権であるというバロメーターです。売掛先の経営状態はもちろん、債権の金額がきちんと期日通りに入金されるのかという点を審査されます。
債権の信頼度という点では、もうひとつ意味合いがあります。それが、債権のエビデンスです。請求書や領収書、過去の取引履歴などが債権の証明書となり、ファクタリングの可否に大きく影響するのです。どうしてここまで、債権のエビデンスを審査されるのかというと、過去に「架空債権」によるファクタリング会社が被害に遭った金融事件が起こったためです。
売掛元と売掛先が共謀し、巨額の売掛債権を発生させたように見せかけ、売掛先の企業を計画的に倒産させ、ファクタリング資金を騙し取ったという事件です。この事件は、未だに解決していません。このような事件を二度と起こさないために、債権の信憑性が厳しくチェックされています。
売掛元の信頼度
銀行系ファクタリングは売掛先だけではなく、売掛元の財務状況もチェックされます。では民間のファクタリング会社での売掛元の信頼度とは何を指すのでしょうか?
民間のファクタリング業者の中には、ノンバンク系と独立系の2種類があります。基本的な審査は売掛先と債権が対象ですが、売掛元の「人柄」も審査対象になっている場合があるのです。
ファクタリングは金融取引です。大事な資産であるお金を扱う金融工学であるため、最終的には「人対人」のやり取りになります。人対人の取引には、信頼関係が不可欠です。少しでも疑われる可能性があれば、取引自体成立しません。
ファクタリングは、売掛債権という物を言わぬ「権利」を売却します。しかし、売却を決めるのは、債権を持っている申込者(売掛元)です。売却する先も、人が運営しているファクタリング会社です。
人と人との信頼関係が、ファクタリングには「手数料」となって現れてくることがあります。ファクタリングの継続利用で手数料が下がるのは、ファクタリング会社と利用者の間に、契約+信頼が生まれているからなのです。
もし信頼関係が無い状態で、継続利用をしたとしましょう。ファクタリング会社を運営するあなたは、わざわざ手数料を下げて上げようと思いますか?思わないはずです。継続利用は、営業をする必要が無い分、ファクタリング会社にとってはおいしい顧客、太客です。
信頼関係があるからこそ、手数料%ダウンという形で契約を勝ち取ることができるのです。
ファクタリングできない債権もある
ファクタリング審査を受ける前に、ファクタリングができない債権があることを覚えておいてください。今から売却を検討している売掛債権。本当に売却可能な売掛債権ですか?
個人事業主が売掛先の場合
多くのファクタリング会社は、個人事業主が売掛先の場合、利用を断られるか、利用(買取金額)を制限されるかです。これには理由があり、法律で定められている「債権譲渡登記」が個人事業主では利用できないためです。
債権譲渡登記とは、法務局に債権の譲渡をしましたという事実を届け出る法的な手続きです。万が一売掛元が債権の二重譲渡を行なって不正に資金を調達した場合、この債権譲渡登記があることで、裁判所へ訴えることができるのです。
しかし、債権譲渡登記の届け出ができるのは、原則「法人格」と定められています。法人ではない、個人事業主は債権譲渡登記ができません。そのため、多くのファクタリング業者では個人事業主が売掛先の債権は買取不可にしているのです。
入金期日までの期間が長い債権
ファクタリングは、本来の入金期日よりも前に資金化することができる金融工学です。3カ月後の支払いを1ヶ月にして、企業の資金繰りに利用します。ファクタリング会社は、その債権を本来の期日である3カ月後に資金化(2社間の場合売掛元からの入金、3社間の場合は売掛先からの入金)できます。
入金期日が、1年後や2年後などのように、年単位で契約してある債権は買取ができません。ほとんどのファクタリング業者は、最大でも3カ月、業種によって6カ月程度が限度です。
入金期日までの期間が長いということは=入金期日までに売掛先が倒産するリスクが高いということを意味しています。1年後の債権を買い取って、10ヶ月後に倒産して債権金額の回収ができなくなったら、ファクタリング会社の丸損です。そのため、入金期日までの期間が長い売掛債権は買取を不可にしている場合が多いのです。
ファクタリング審査の基本を押さえてスピーディーな資金調達を
ファクタリング審査の基本、そして重要視されるポイントを抑えることで、より効率的でスピーディーな資金調達が可能になります。お金を扱う金融サービスだからこそ、きちんとした対応をしてファクタリング会社との信頼関係を築く必要があることは覚えておいて下さい。