請求書の現金化。今までは手形割引による請求書現金化サービスが主流でした。しかし、手形割引は取引先が破産や民事再生手続きを受けてしまった際、調達した資金を返却しなければならないデメリットがあります。
ファクタリングは支払期日がまだ来ていない請求書、つまり「売掛債権」を現金化できる金策です。中小企業庁など日本政府も利用を促進している合法的な金策です。ファクタリングを効果的に利用するためには、ファクタリングとはどのような金策なのかを知らなくては意味がありません。
ファクタリングの仕組みやメリット、注意すべきデメリットを頭に入れて効果的な資金調達を行なってください。
請求書を現金化する=手形割引とは異なる金融工学
請求書を現金化すると聞くと「手形割引」が連想されます。手形割引はファクタリングに近い金融サービスですが、2つの決定的な違いは「償還請求権の有無」です。たった1つの違いが企業の資金計画に大きな影響を及ぼすのです。
ファクタリングの仕組み
ファクタリングは売掛債権を売却譲渡することで資金調達をする金策です。売掛債権が無ければ利用できません。売却先であるファクタリング会社に売掛債権総額の数%を手数料として支払うことで買取が成立します。
取引方法には2種類があります。
- 2社間ファクタリング(2社間取引)
- 3社間ファクタリング(3社間取引)
2社間ファクタリングとは請求書の現金化を申し込んだ企業(あなた)と、請求書の買取を行なうファクタリング会社の2社で交わす取引です。3社間ファクタリングは2社間に請求先である取引先(売掛先)が含まれます。
それぞれのメリットやデメリットの大きな違いは「資金化までのスピード」と「手数料の金額」です。
- 2社間⇒〇資金化まで最短即日/▲手数料が高い(10%~30%)
- 3社間⇒〇手数料が安い(5%~15%)/▲資金化までの時間が請求先のスケジュールに依存している
調達までの時間的余裕や調達した資金の活用先など、状況に合わせた取引方法を選択してください。
ファクタリングと手形割引との違い「償還請求権の有無」
ファクタリングと手形割引最大の違いは「償還請求権の有無」です。償還請求権とは、売掛先が破産などで債権(手形or売掛債権)が不渡りになった場合、買戻しできる権利のことを指します。
手形の発行元は基本的に「銀行」です。不渡りになって損害を被った場合、銀行の信用問題にもなりかねません。そのため、手形割引は「償還請求権有り」での契約になるのです。
対してファクタリングは「売掛債権の売買契約」によって資金調達を行ないます。ファクタリング会社は銀行系や独立系、ノンバンク系と分かれていますが、銀行系意外のファクタリング会社では基本的に「償還請求権無し」での契約が一般的です。
償還請求権無しであれば「不渡りのリスク」ごと売却譲渡できることになります。元請の倒産による下請企業や孫請企業の「連鎖倒産」を防げるのです。
請求書の現金化を活用して資金繰りを良くするためには「優先順位」が大事
請求書を現金化できれば資金繰りが良くなる。必ずしも資金繰りが良くなる訳ではありません。計画的な利用で資金繰りが改善するのです。そのためには資金の使い道に「優先順位」をつけなくてはいけません。
- 重要で緊急
- 重要だが緊急ではない
- 重要ではないが緊急
- 重要でもなく緊急でもない
ファクタリングが最も効果を発揮するのは「1」の重要で緊急な状態です。業界によって重要で緊急な状態は異なります。原則として
- 危機や災害、事故、病気
- 締め切り直前のタスク(経費支払いなど)
- クレームへの対応(損害賠償など)
この3つの状態が挙げられます。従業員や顧客の命を守るための費用として。支払期日直前の金策。損害賠償などが発生するクレーム対応に活用できるのが「ファクタリング」です。
「2」の重要だが緊急ではない状況には、設備投資など「会社の成長のための経費」が該当します。ファクタリングで得た資金を使っても問題ありませんが、利率が低い融資と比較検討すべきです。税金対策にもなりますし、トータル的な利益を考えて金策を選択してください。
請求書現金化金融サービス【ファクタリング】のメリット
請求書を現金化するファクタリングのメリットには
- 現金化までのスピードが早い
- 審査は基本的に売掛債権と取引先の財務状況
- 償還請求権無しの取引が多い
- 決算や与信情報に傷が付かない&影響を受けない
この4点が挙げられます。
現金化までのスピードが早い
ファクタリングは申し込んでから入金まで、最短即日での現金化が可能です。ファクタリングは融資と違い「請求書」である売掛債権を売却して資金調達をする方法です。売掛債権が確実に入金されることが証明できれば、すぐに資金調達できます。
重要で緊急な状況での資金調達に向いているのは、このメリットがあるためです。
審査は基本的に売掛債権と取引先の財務状況
ファクタリングの審査対象は、申込をした企業ではなく、請求先の企業です。売掛債権の不渡りを起こさない会社と判断されれば、現金化が可能です。
ただし、請求先の経営状況が芳しくなく、売掛金の回収が難しいかもしれないと判断された場合は、審査落ちする可能性もあることを覚えておきましょう。
償還請求権無しの取引が多い
償還請求権無しの取引がほとんどであるため、請求書の不渡りリスクごとファクタリング会社に売却譲渡できます。どれだけ利益を上げている企業であっても急に倒産することもあります。
元請企業である場合、倒産によって下請企業や孫請企業が連鎖的に倒産する可能性もあるのです。このような不渡りリスクごと売却譲渡できるのは、手形などではありえません。ファクタリングだからこそできる大きなメリットなのです。
決算や与信情報に傷が付かない&影響を受けない
ファクタリングは帳簿上、借方が未収金、貸方が売掛金として計上されます。手数料は売上債権売却損として計上されます。融資の場合は「借入金」になるため、決算期に返済が終わっていない場合はマイナス益として計上されるのです。ファクタリングは借入金ではなく、未収金と売上債権売却損という経費でけい計上できるため、赤字決算にはなりません。
与信情報にも傷が付きません。与信情報とは、信用情報機関に記録されている金融取引情報のことです。融資を受けて返済日に支払いができなかったり、支払遅延が連続して起こった場合に「金融事故」として記録されます。俗にいう「ブラックリスト入り」です。ブラックリストになると、銀行などからの融資審査も通りづらくなってしまうのです。
ファクタリングは審査対象が請求先であるため、申込企業が赤字決算だとしても審査通過する可能性が高くなります。
請求書現金化時に注意すべきファクタリングのデメリット
ファクタリングはメリットばかりではありません。利用の際には注意すべきポイントがあるのです。
- 手数料が発生する
- 債権譲渡登記が求められる場合は個人事業主の2社間取引は利用できない
- 銀行系ファクタリング会社は申込企業の審査も行なう
- 法律が貸金業法ほど整備されていない
デメリットを理解した上で請求書の現金化を行なってください。
手数料が発生する
ファクタリングには手数料が発生します。手数料は先ほども述べたように、2社間取引で10%~30%、3社間取引で5%~15%が相場です。
100万円の請求書を2社間と3社間で現金化した場合の例を挙げてみましょう。2社間の場合は10万円~30万円の手数料が発生し、3社間では5万円~15万円の手数料が発生します。最低手数料%と最高手数料%の差は25万円です。請求金額が高くなればなるほど、手数料で差し引かれるお金も増えていくのです。
請求額と必要な資金とのバランスを考えてファクタリングを活用してください。
債権譲渡登記が求められる場合は個人事業主の2社間取引は利用できない
ファクタリングでは債権譲渡登記を必要とする場合もあります。債権譲渡登記とは、債権の持ち主(売掛金の入金を受ける企業)が誰であるかを法的に証明する届け出です。ファクタリングで譲渡をした際、一緒に登記を求めるのは「架空債権」や「二重譲渡」を防ぐためです。
請求書を買い取る側の予防策でもありますが、登記を求められる取引の場合、個人事業主とファクタリング会社による「2社間ファクタリング」は利用できません。法律に債権譲渡登記は法人同士で無ければならないと明記されているのです。
”第一条 この法律は、法人がする動産及び債権の譲渡の対抗要件に関し民法(明治二十九年法律第八十九号)の特例等を定めるものとする。
(定義)”
引用元 動産及び債権の譲渡の対抗要件に関する民法の特例等に関する法律
個人事業主が請求書を現金化したいのであれば
- 請求先が法人
- 3社間ファクタリング
この2つの条件をクリアしなければならないのです。
個人事業主のファクタリングについて更に詳しく知りたい場合はこちらのコラムをお読みください。
参照 ファクタリングで即日資金調達したい個人事業主へ贈る5つのポイント
銀行系ファクタリング会社は申込企業の審査も行なう
銀行系ファクタリング会社とは、メガバンクや大手地銀が親会社もしくは銀行で行なっているファクタリングサービスのことです。民間のファクタリング会社は、金融会社などが運営するノンバンク系と、ファクタリングを主業務とする独立系があります。銀行系ファクタリング会社は、ファクタリング業界の中で特殊な立ち位置にいます。
本来の審査対象は請求先と売掛債権の信憑性です。しかし銀行系ファクタリング会社は「償還請求権有り」の取引をデフォルトにしています。不渡りを出した場合、銀行側の信用問題に関わるため、申込企業の審査も行なわれるのです。手数料は民間会社に比べてかなり安いですが、自社の財務状況が赤字の場合は審査通過が難しいデメリットがあります。
銀行系ファクタリング会社の審査について更に詳しく知りたい場合はこちらのコラムをお読みください。
参照 ファクタリングの審査が通らない ファクタリングの審査って緩いのはウソ?
法律が貸金業法ほど整備されていない
ファクタリングに関する法律は民法466条の「債権の譲渡性」が最低限のルールとして明記されています。しかし民法466条「債権の譲渡性」には、ファクタリングの原則しか明記されていません。手数料の上限額などは決まっていないのが現状です。
融資は貸金業法によって利息上限などが細かく設定されていますが、ファクタリングに関してはまだ認知度が低いこともあり十分な法整備ができていません。2020年4月から民法改正が行なわれ、466条も改正対象ではありますが手数料の上限値などは明記されていないのです。
法整備がされていないことがデメリットというのは、悪徳ファクタリング会社や詐欺業者、闇金融などの反社会的組織が「ファクタリング業界で暗躍しやすい環境」であることにつながります。実際に元闇金融のファクタリング会社が違法な取り立てなどで摘発もされています。
自社の請求書という財産を守るためにも自己防衛として知識武装することが重要なのです。
請求書を現金化するなら覚えておくべきファクタリングの仕組み
請求書を現金化できれば慢性的な資金繰りの悪化を防ぎつつ利益確保が可能です。ファクタリングの仕組みやメリットデメリットを頭に入れておき、効率的かつ効果的に資金調達を行ないましょう。
資金繰りに困ったら、まずはファクタリングを思い浮かべてください。それだけでも資金調達方法の幅が広がり、資金繰りの悩みがいくらか消えるはずです。